プラモ作りを数十年ぶりに再チャレンジするにあたり、新たに塗料を揃えるところからになった。で、健康や環境を多少なりとも考えて、有機溶剤系塗料ではなく水性塗料を使おう、ということで検討した結果、たどり着いたのが「ファレホ」というスペイン発の塗料。
ボークスが日本総代理店になっているので、製品の入手経路自体は整っているのだけど(どこでも買えるというほど手軽ではないが……)、普及度合い的にとにかく情報が少ない。ボークスのサイト見たって少ない(苦笑)。
ということもあったので、先日店舗で開催された実演会の資料や質疑で仕入れた情報、それから本国サイトのFAQを見て気になったところを、ざざっとまとめてみた。戦車やフィギュア・ミニチュアの人向けの話はざっくりカットで恐縮ですが、メカ系プラモデルを作ってる初心者の独学メモということで。
あくまで僕個人が見聞き・素人翻訳した話を独学でまとめたものなので、解釈や取り扱いは自己責任でどうかひとつ。現状、資料漁ってるだけの頭でっかち状態なので、実践的なことはわからんことだらけです(苦笑)。
あと、日本の欧米の気候風土の違い、というポイントは考慮する必要がありそう、とは実演の際にも言ってた。本国FAQがすべてがすべて日本でもそのまま通用するとも限らないので、最終的には実践して調整、でしょうかね。
まず補足。ファレホの各カラーや補助製品の型番は、本国だと「XX.XXX」という表記だけど、ボークスのサイトだと「XXXXX」になってる。大した問題はないけど、文中は本国準拠になってます。
■ボークス 店頭POP・実演などで見聞きした話
- 希釈についてはエアブラシクリーナーが全般的にオススメ。精製水でもいいでしょうとのこと。
- 本国サイトで存在が結構謎な「エアブラシシンナー」を推奨している件については有効な情報なし。ただし、実演時にいただいた資料の中に「ここ最近ファレホシンナーはエアブラシシンナーと同じ内容物に切り替わってきている」という記述もある。そもそも、「ファレホシンナー」というもののラインナップについて、ボークスがちょっと混乱している気がしないでもない…… >>FAQ参照
- モデルエアーを希釈すべきかどうかという話については、基本的には希釈しないで吹けるように機材と吹き方を調整するのが作法としてはよさそう、とのこと。強めのエア圧でニードル絞りめで広めに吹き付けるイメージ。薄めに希釈してしまった方がむしろ塗料自体の出が悪くなることもあるとか。
- ラッカー系塗料でのエアブラシ塗装の常識は一旦忘れ、ファレホではこういう作法・別物なのだ、と理解した方が手っ取り早そう。
- 店頭POPによると、希釈に使う液によって塗膜の強さには違いが出る模様。(エアブラシ?)シンナー>エアブラシクリーナー>精製水。 >>FAQ参照
- アルコール系ゴールド、シルバーは退色が目立つ傾向とのこと。中でもゴールドは1〜2ヶ月くらいという体験談も。 >>FAQ参照(改善されたかも??)
- 墨入れにはウォッシング用に用意されているゲームインクやファレホウォッシュが有効。流動性が高く拭き取りも楽なのでサクサク進む。混色可。
- エナメルで墨入れOKとのこと。拭き取りも大丈夫らしい。ただまぁ、実際使ってみるとゲームインクで十分な気もする
■本国サイトFAQより、個人的に気になったところの抜粋
※あくまで僕の自力翻訳なのでご利用は自己責任で。
- -------------全般-------------
- 混色はできるの?
- モデルカラー、ゲームカラー、モデルエアーの混色は可能。ただし粘度の違うものを混ぜるときは慎重に(原文直訳:粘度の違いは仕上がりに影響するかもしれない)。
- #そのほか、ゲームインクやウォッシュ、パンツァーエースなんかももちろん混色可能。
- 他ブランドの水性アクリルカラーとの混色はできるの?
- うちのアクリルカラーはすべての水性アクリル塗料と混色できるよ
- #マジか!?
- モデルカラーの希釈(筆)
- もし非常に細かい部分を塗るのであればシンナー(70.524)を使う。色素を含まないほかは塗料と同じ成分。
- カドミウム問題
- 一部モデルカラーはカドミウムを含有。カドミウム含有製品はエアブラシで使わないように。使っちゃいけない製品はラベルに「Do Not Spray」表記あり。
- #2chなんかでは結構攻撃対象になってるこの問題。リストがあればよかったのだけど……明記はされているので購入時は一応確認を。
- 乾燥までの時間は?
- 下地の状態、塗膜の厚さ、湿度や気象条件にもよるけど、モデルカラーとゲームカラーはすぐに触れるようになるほど早い。下地の状態がよく、最高水準の耐傷効果が得られるまでは48時間以上くらいの時間が必要。モデルエアーの場合はさらにもっと早いよ。
- #ただちに、瞬間で、と書いてある。時間表記は特になしw
- パンツァーエースって?
- 同名の雑誌がセレクトしたWW2モノに特化したライン。化学的構成はモデルカラーと同じ。
- ゲームカラーの特性
- 粘度はモデルカラーよりも低い(モデルカラーの半分くらい、1500~4000cP<センチポア=粘度の単位>。モデルカラーは4000~6500cP)。ウォッシュやインクというラインも用意。手で触るもの用なので速乾性高い。子供が使っても安全(欧米規格的に)
- ゲームカラーはエアブラシで使えるの?
- エアブラシ用に開発されておらず、モデルカラーよりも速乾性が高いため向いていない。
- -------------モデルエアー-------------
- モデルエアーって?
- さらに低粘度(ゲームカラーの1/10程度、200~400cP)、エアブラシで吹ける安全な顔料のみ使用。
- 希釈
- 原則不要。使うならエアブラシシンナー(71.061)で。
- モデルエアーにシンナーはどのくらい加えるべき?<補助製品のFAQより>
- ノズルサイズ次第。でも25~30%以上加えるべきではない。
- #むむむむ。モデルエアーのFAQでは「1:3」という記述があったので、てっきり3倍希釈まで、ということかと思っていたのだけど、英語での表現的には「俺1に対して相手が3」ということらしく、それを踏まえて読み直すと、「シンナー1に対して塗料が3」ということか。
- プライマーは使うべき?
- いつだってプライマーは推奨。
- バーニッシュ蒔くまでどのくらい待てばよい?
- 塗装が乾いてから20~30分(やや原文の解釈に自信なし。You should be able to apply a coat of varnish about 20 to 30 minutes after the coats of paint have dried.)。バーニッシュは3回ぐらい塗るとベストな結果が出る。コートとコートの間は湿度次第で適宜数分待とう。
- 乾燥を早めるのにヘアドライヤー使ってもいい?
- いいけど、低めの温度で直撃は避けてね。
- 金属に使える?
- 使えるよ。でもプライマーが特に重要だよ。
- サテン仕上げにしたいのだが、グロスバーニッシュを足すことは可能か
- 可能だよ。カップに直接足してね。
- #ちょっと解釈に自信なし。2種のバーニッシュを混合して仕上がりイメージの調整ができるかという話かと。
- エナメル下地にモデルエアーで塗りたい
- 溶剤ベースのコートで保護してからならイエス。
- #だいぶ自信なし。ボークス資料だと、エナメル上では乾燥しても水で溶ける、とある。それもあってのまずは溶剤ベースでコートしろ、なのかな
- モデルエアーを使うときの最小ノズルサイズ
- 0.2mm以上を推奨。あとは模型のサイズ次第で適切なノズルサイズを選ぶべし。
- モデルエアーを使うときは圧はどうすりゃいい?
- 20~25PSI=1.38~1.66bar=0.14~0.17MPa
- #やはり結構高め
- 17mlでどのくらい塗れる?
- 50×50cmくらい
- -------------メタリックカラー-------------
- #メタリック系カラーには、化学構成的に分けると、水性アルカリ(すなわち普通のファレホ)のものとアルコールベースのものがある。
- 水性メタリック塗料って化学変化しちゃうからバーニッシュ塗れない?
- 化学変化しない。より輝くけど、一部バーニッシュ使わないほうがいいものもある(訳に若干自信なし)
- モデルカラーとゲームカラーのメタリックは使ってOK。
- モデルエアーのうちアルミニウムと銅/亜鉛合金を含むものは金属染料の影響でバーニッシュの効きが落ちる。でもなしでもいい色だよ(と書いてあるw)。モデルエアーの71.062~71.068は塗らないほうがよい、71.069~71.073は輝きが増す
- #ちなみに、the KOGにはクレオスの水性トップコートをかけてあるが――特に問題はなし(触った感じでは。化学的にどうかはわからない。耐傷はある程度あると思う)。とはいえ、塗らないほうがよかったのかなぁ……よくわからん。
- アルコールのメタルカラーにバーニッシュは?
- 塗膜保護のためにバーニッシュすることはできる。ツヤのためというのであれば必要ない。
- アルコール系メタルカラーの注意
- 水と混ぜると凝固や曇りの原因になる。きれいな筆で使うこと。さび防止剤入りになったので酸化を防ぐための特別なバーニッシュは不要になった(前述の退色問題は解決したってことなのかなぁ)。
- -------------プライマー-------------
- ファレホのプライマーの特長
- 水性、アクリルポリウレタン、長持ち、ディテールを潰さない。エアブラシで吹ける。
- #クレオスやタミヤみたいなキメに関する数値的記述なし。
- ノズルのサイズ、希釈は?
- 0.35mm程度がいいとうちの専門家が言ってる。希釈は必要ない。
- モデルエアーのベースグレー71.097とは違うの?
- 違うよ、全然ちがうよ。あっちはただのグレー色だよ。
- #以前は混同するような名前だったっぽい。
- ポリエステルパテの上に塗れる?
- ポリエステルでもほかのプラスチックでも問題なし。
- ほかの塗料と一緒に使える?
- 水性なら使える。
- エアゾルプライマーが手に入らん
- 国際空輸の制限と船便の割の合わなさ。
- -------------バーニッシュ-------------
- マットバーニッシュは鈍い仕上がりすぎでサテンバーニッシュは明るすぎる。片方に片方を重ねてかけられる?
- ノー。バーニッシュはトップに塗るもの。光沢感の調整をする場合はミックスして使って。事前にテストしながら調整を。
- バーニッシュに気泡が入ってしまうのだけど
- 気泡が消えるまで数時間かかるのでバーニッシュはシェイクしないように。優しくかき混ぜて。
- #これは知らなかった……
- 塗装した上に塗ったバーニッシュを、塗装を傷付けずに剥がしたい
- アルコールまたはエアブラシクリーナーを使えば直下の塗装をはがせる。
- #バーニッシュと一緒に下の色も剥がれちゃうように思うけどなぁ……
- バーニッシュの乾燥時間と追加塗り間隔(別のQ中の補足説明)
- エアブラシを使った場合、10~15分で乾燥する。エアブラシは薄く塗れるので直前に塗った層の効果を阻害しないため、追加塗りを素早く行える。
- -------------補助製品諸々-------------
- グレーズメディウムの注意点
- 混合の比率は50%までに(1:1ってこと?? 解釈自信なし)
- 乾燥を遅らせる手法
- 1)リターダーを使う。混ぜる量は塗料総量の5%までに抑えること。モデルエアーは元々入っているので追加のこれ以上追加しないこと。
- 2)シンナー(70.524)にも遅らせる効果がある。
- 1)と2)はいずれもカラーの基本的な成分に影響を与えない。
- 3)水(できれば精製水)でも乾燥が遅くなるが定着力も弱まる
- モデルカラーやゲームカラーを希釈するのにファレホシンナーのほうが水よりいいのはなぜ?
- ファレホシンナーにはアクリル樹脂が含まれていて、定着力や塗料の成分に影響を与えない。
- 塗装をはがすにはどうしたらいい?
- アルコールを使う。潤滑剤入りで使いやすいのでエアブラシクリーナーを使う人も多い。完全乾燥後はペイントリムーバーを使う必要があるけど模型の下地にダメージが行く可能性も。まずは優しくアルコールかエアブラシクリーナーを試してみて。
#このエアブラシシンナーがどうにも曲者。
本国サイトによると、エアブラシシンナーは4サイズ用意されていて、
・17ml 71.261、32ml 71.061、60ml 71.361、200ml 71.161という型番が割り振られている。で、ボークスを見てみると、当該製品は、
・71.261=リストになし、71.061=ファレホ専用ホシンナー(誤植だよなーw)、71.361=リストになし、71.161=ファレホ専用シンナー(特大)
という感じ。このほか、ファレホ専用シンナー(70.524)もラインナップされている。こいつはモデルカラーのラインなので、たぶんエアブラシには使うべきじゃないやつだな。店頭では見かけないけど。
で、僕の手元にあるのは、71.061と71.161があるのだが……とても同じ内容物とは思えない(苦笑)。71.061は透明で、71.161は白濁タイプ。ただ、71.161のラベルを見ると「エアブラシ用」というようには書いてある。ただ前述したように、「ここ最近ファレホシンナーはエアブラシシンナーと同じ内容物に切り替わってきている」らしい。
ボークス実演時に聞いた話によると、エアブラシ希釈にシンナーを使うと「詰まりやすくて大変」らしいのだけど――ちょっとこのあたりは自分で試してみて結果を確かめないとわからんなぁ。
とりあえず、FAQとボークスの話を整理すると現状はこんな感じ、ということで。
オレも手持ちのガイアカラーがなくなったらファレホ民になるぜよ。
暇ではないのだが……なんか通勤と寝る前とでできちゃったw